リコーダーのはなし
小学校3年生くらいだったと記憶しているのだけれども、変な時期にスペインの学校から日本の学校へと戻ってきたものだから音楽の授業で必要なリコーダーを持っていなかった私は母親に連れられリコーダーを買いに出かけた。
街の楽器屋さんには白いリコーダーしか置いていなかったのでそれを買ってもらった。
色の事なんて気にしなかった。それよりも明日にある音楽の授業にみんなと一緒にリコーダーを習いたかったから。
ところが、いざ音楽の授業が始まってみるとみんなが手にしているのは黒いリコーダーで
きっと学期初めに学校でまとめて購入したもので、もちろんのことみんなおそろいの黒いリコーダー。
それを見た瞬間に、まわりのみんなと違う白いリコーダーを持った私はひどく複雑な気持ちに襲われた。
誰かにからかわれたのか、自分がみんなと違うのが嫌だったのか、もしくはただ恥ずかしかっただけなのかは覚えていないけれども、
次の音楽の授業からはわざとリコーダーを忘れて学校へ行った。
リコーダーを忘れた私に先生は、練習にならないからリコーダーがあるつもりで指を押さえる練習をするようにと言った。(今で言うエアリコーダーみたいなこと)
結局最後まで意地を張ってわざと白いリコーダーを忘れて学校へ行った。
エアリコーダーのほうがよっぽど目立つのに、なんていうことを
ふと、思いだしていた。
今だったら、そんなこと気にせずに胸を張っていればよかったのにと思うことも
あの頃は小さい世界が自分の全てで、今よりもどうしたらいいのかわからないことだらけだった。
小さな嘘はいつまでたっても残るけれども、大人になって良かったと思うことのほうが多い。
それにしてもリコーダーという文字、なんだか久々に見た気がする。